波板コラム
ポリカーボネートとアクリルの違いとは?メリット・デメリットを比較
「カーポートの屋根をポリカーボネートとアクリルのどちらにするか悩んでいる」
「ポリカーボネートとアクリルのメリット・デメリットが知りたい」
雨風にさらされるカーポートやベランダの屋根は、耐久性があり強度の強いポリカーボネートがおすすめです。
ただしアクリルにも魅力があるため、どちらを使用するか悩んでいる方もいるでしょう。
本記事を読むことで、ポリカーボネートとアクリルのメリット・デメリットが分かります。
カーポートやベランダ屋根の建材をどちらにしようか悩んでいる方はぜひ読んでください。
Contents
ポリカーボネートとアクリルの違いとは?
ポリカーボネートとアクリルは、以下のポイントが異なります。
・耐衝撃性
・耐熱温度
・難燃性
・耐用年数
・加工性
・価格
それぞれ詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
耐衝撃性
ポリカーボネートの強度はアクリルと比較して、衝撃に強いという特徴があります。
ポリカーボネートの強度はアクリルの約50倍を誇り、プラスチック素材の中では最高レベルです。
強度が高いだけでなく柔軟性もあるので、ほとんど割れることがありません。
一方のアクリルは硬度が高く傷つきにくいものの、耐衝撃性はポリカーボネートに劣ります。
ガラスなどに比べると強度が高い素材ですが、強い衝撃が加わるとヒビが入ったり割れたりすることもあります。
耐熱温度
ポリカーボネートはアクリルと比べて使用温度が幅広いため、暑さや寒さに幅広く対応できます。
ポリカーボネートの最低使用温度は-40度、最高使用温度は120〜130度です。
一方、アクリルの最低使用温度は-60度、最高使用温度は80度となっています。
最低使用温度はアクリルのほうが低いもののポリカーボネートは使用温度の幅が広いため、季節の影響を受けにくいと言えます。
暑い夏や寒い冬でも影響が少ない分、屋外で安心して使用可能で、屋外のカーポートやベランダの屋根材にぴったりです。
難燃性
ポリカーボネートは「自己消火性」を備えているため、アクリルと比較してより燃えにくい性質があります。
ポリカーボネートに着火しても燃え広がることなく、火元が離れると自然と火が消えてしまいます。
連続耐熱温度も高いため、火災が発生しても燃え広がりにくいことも特徴です。
一方、アクリルはポリカーボネートと比べて燃えやすい性質があります。
燃焼速度が遅く引火性があるわけではありませんが、最高使用温度を超えると穴が空いたり変形したりしてしまいます。
万が一火災が発生した場合は燃えやすい傾向があることをご認識ください。
パーティションなどに使用するなら、アクリルよりもポリカーボネートを選ぶほうが、延焼のリスクを下げられます。
耐用年数
ポリカーボネートとアクリルを耐用年数で比較すると、同程度かアクリルのほうが長い傾向があります。
それぞれの耐用年数は以下のとおりです。
・ポリカーボネートの耐用年数:10年
・アクリルの耐用年数:10~20年
ただしアクリルはポリカーボネートと比べて耐衝撃性が低いため、耐用年数を待たずに破損するおそれがあります。
アクリルを使用する場合は、どこかに破損がないか定期的にチェックするのがおすすめです。
加工性
ポリカーボネートとアクリルを比較すると、アクリルのほうが加工に向いています。
アクリルはカットや穴あけ、曲げといった加工がしやすいため、DIYをするならアクリルを選びましょう。
ポリカーボネートは、アクリルと比べて接着や熱曲げといった加工には向いていません。
DIYでポリカーボネートを使用するなら、板状で使用できる屋根や看板などがおすすめです。
価格
価格で比較すると、安いのはアクリルです。
ポリカーボネートはエンジニアリングプラスチックとも呼ばれ、さまざまな優れた機能を有しています。
機能が多い分、樹脂プラスチックの中でも高価な部類です。
そのため買い替え頻度が高いものや安価なものに、ポリカーボネートを使用することは多くありません。
一方、アクリルは樹脂プラスチックの中でも安価な部類です。
価格が安く加工もしやすいことから、幅広いシーンに活用されています。
ただし用途によってはポリカーボネートのほうが、トータルコストが安くなる場合もあります。
総合的に検討したうえで、どちらの素材を使うのか決めるのが重要です。
ポリカーボネートとは?
「ポリカーボネート」とは、ガラスの数百倍の強度を持つ透明プラスチック素材で「ポリカ」とも呼ばれます。
汎用プラスチックよりも強度や耐熱性に優れており、加工しやすい素材です。
ただしアクリルよりも耐熱性・強度ともに高いことから、カーポートやベランダの屋根などに用いられやすい素材です。
ポリカーボネートの使用例
ポリカーボネートは透明性を維持しつつ割れにくさ、壊れにくさが求められる製品に多く用いられます。
【ポリカーボネートの使用例】
・自動車のヘッドランプ
・航空備品
・防弾盾
・家電製品
・カメラのレンズ
・ヘルメット など
精密な加工を可能にする寸法精度の高さから、航空備品にも採用される素材です。
ポリカーボネートの種類
ポリカーボネートは用途に合わせた3つの形状があります。
・平板
・波板
・中空ポリカーボネート
形状ごとに特徴が異なるため、用途に適したポリカーボネートの種類を選ぶ必要があります。
平板
平板とは、シンプルで平らな一枚板のことです。
ポリカーボネートの平板には無色透明なものや色が付いたもの、すりガラスのような加工がされたものなど、種類が豊富にそろっています。
高い耐衝撃性や耐熱性、採光性を兼ね備えており、種類に応じて屋外にも屋内にも使用されています。
たとえば屋外であれば屋根やカーポート、看板などにぴったりです。
屋内であればパーティションや階段の腰板などに適しています。
波板
波板とは、波のような形状をした板状の建材のことです。
波のような形状にすることで強度が増し、平板よりも丈夫になります。
さらに雨水を排出しやすい構造も特徴です。
ポリカーボネートの波板は高い強度と軽量性、さらに雨が流れやすい特性から、おもに屋根材として使用されます。
雨水が流れやすいため、雨どいと組み合わせて使用することが多いです。
ポリカーボネートの波板も無色透明なものから色付きのものまでさまざまな種類があるので、建物に最適なものを選べます。
中空ポリカーボネート
中空ポリカーボネートとは、薄いポリカーボネート2枚を空気層を含むように重ねて作った建材を指します。
断面がダンボールのような見た目で、平板と比べて軽量なことが特徴です。
建材の中に空気層を含んでいるため断熱性能が高くなっています。
費用や施工にかかるコストが低いこともポイントです。
摺りガラスと同じように透明性が低いためパーティションにも利用されます。
他のポリカーボネートと比べて穴あけなども容易なため、DIYに活用されることもあります。
ポリカーボネートは傷つきやすい?
ポリカーボネートはアクリルと比較して柔らかいため、表面に傷がつきやすいです。
傷つきやすいため屋根のポリカーボネートを掃除するときは水で洗い流し、必要があれば柔らかい布やスポンジを使用します。
また薬品にも弱いため、洗剤を使うならば中性洗剤を活用しましょう。
ポリカーボネートのメリット
ポリカーボネートのメリットは、プラスチック材で最高レベルの強度と耐久性の高さです。
防弾盾や保護メガネに採用されていることからも、ポリカーボネートの強度の高さが伺えます。
ポリカーボネートは電気を通しにくい「絶縁性」を持っており、ブレーカーの端子台にも使用されます。
ドライヤーや電子レンジにも使用されるほど耐熱性が高い点もメリットです。
耐衝撃性が高くて割れにくい
ポリカーボネートは耐衝撃性が高いため、ちょっとやそっとの衝撃では割れません。
ポリカーボネートの強度の高さは、ガラスと比較すると数百倍、アクリルでは数十倍もの違いがあります。
高い耐熱性、断熱性を持つ
ポリカーボネートは断熱性が高く保温効果があります。
外壁材や屋根材として使用すると冬は熱を外に逃しにくいため暖かく、夏は外からの熱を通しにくくなり空調効率が上がります。
耐候性が高い
暑さや寒さ、雨風といった自然環境への耐性(耐候性)が高いことが、ポリカーボネートのメリットとして挙げられます。
屋根は太陽光が長時間当たりやすいため屋根材が劣化しやすいです。
ポリカーボネートは耐候性が高くて自然環境を要因とした劣化が発生しにくいため、屋根材として活用されやすいです。
燃え拡がりにくい
ポリカーボネートは難燃性が高く燃えにくい素材です。
火元から離すと自発的に消える「自己消火性」を備えているため、屋根が燃え広がるのを防げます。
仮に燃えても有害ガスが発生しないため、外壁やカーポートの屋根をはじめとした建材としての使用に向いています。
ポリカーボネートのデメリット
ポリカーボネートは硬度が低いため、表面に傷がつきやすい点がデメリットです。
薬品にも弱いため、掃除では十分な注意が必要です。
繰り返し負荷を加える「疲労強度」に弱い点もデメリットとして挙げられます。
表面に傷がつきやすい
ポリカーボネートは硬度が低く、表面に細かな傷がつきやすいです。
掃除では雑巾の使用を控えて水で流しましょう。
薬剤に弱い
ポリカーボネートはアルカリ性薬剤に弱く、ヒビの発生など劣化の原因になります。
掃除は水で洗い流すほか、必要があれば中性洗剤を使用しましょう。
また接着剤や灯油などの有機溶剤にも弱く、割れや変形をおこしやすくなります。
繰り返しの負荷に弱い
ポリカーボネートは繰り返しの負荷への耐性がそれほど高くありません。
ただし表面をコーティング加工することで対策可能です。
汚れを放置すると取れなくなる
ポリカーボネートは長期間汚れを放置してしまうと、汚れが取れにくくなってしまう傾向があるので注意が必要です。
汚れがついてしまった場合はこまめに掃除を行い、清潔に保つ必要があります。
汚れを落とす際には薄めた中性洗剤を使用します。
強く擦ると傷がついてしまうため優しく汚れを落としましょう。
ただし屋根などの人目につきにくい場所にポリカーボネートを使用する場合は、汚れてもそれほど気にする必要はありません。
アクリルとは?
アクリルとは、耐久性や透明性の高いプラスチック素材のことです。
ガラスなどと比べて軽量で耐久性や耐候性に優れており、穴あけや熱曲げなどの加工が容易なことがメリットです。
大規模なものから身近なものまで、さまざまな用途で使用されています。
たとえば耐久性と透明性の高さや加工性の高さから、水族館の巨大水槽にも使用されています。
身近なものだと自動車のテールランプや屋根材、カメラのレンズ、スマートフォンなどが挙げられます。
アクリルの種類
アクリルには、「押し出し板」と「キャスト板」の2種類があります。
それぞれ製造工程に違いがあり、メリット・デメリットも異なります。
押し出し板はアクリル樹脂をローラーで押し出し、製造する建材です。
溶剤接着との相性が良いことや、大量生産が可能で低価格なのがメリットとして挙げられます。
一方、ヒビが入りやすいのがデメリットです。
キャスト板は2枚のガラスを重ね合わせ、間にアクリル原料を流し込んで製造する建材です。
硬度が高く反りが出にくいこと、ヒビが入りにくいことなどがメリットです。
一方で手作業の工程が多いことから、価格が高い傾向があります。
押し出し板と比べて溶剤接着に時間がかかるのも注意点です。
アクリルのメリット
アクリルのメリットは下記の2つです。
・透明度が高い
・加工性が高い
詳しく見てみましょう。
透明度が高い
アクリルの透明度を表す「光線透過率」は、ガラスをも凌ぎます。
透明度の高さが求められる水族館の大型水槽の外壁や、飛行機の窓にも使用されてきました。
加工性が高い
アクリルはポリカーボネートと比べて硬度が高く、より表面の傷がつきにくい点がメリットです。
ガラスと比較すると硬度は低いものの、ポリカーボネートほど繊細ではありません。
重量が軽い
アクリルはプラスチック製品の中でも軽いものに分類されます。
プラスチックの重量計算は、縦(メートル)×横(メートル)×厚さ(ミリメートル)×比重で計算します。
アクリルの比重は「1.19」です。
たとえば3×6サイズで厚さ3ミリメートルのアクリル板の場合、重量は以下のとおりです。
縦0.91メートル×横1.82メートル×厚さ3ミリメートル×比重1.19=重量約5.91キログラム
ガラスの比重は2.5のため、同じサイズで計算すると、重量約12.4キログラムとなり、アクリルの倍以上の重さです。
重量が軽いことから、ガラスなどの重い素材と比べて、さまざまな場所に設置しやすいメリットがあります。
ポリカーボネートの比重は1.2のため、アクリルとほとんど同じ重量です。
アクリルのデメリット
アクリルのデメリットは3つあります。
・熱に弱い
・燃えやすい
・たわみやすい
詳しく解説します。
熱に弱い
アクリルは高温になると変形が始まるため、直射日光が当たる場所には向いていません。
直射日光が当たり温度が上昇しやすい温室やテラス、カーポートの屋根に使用するならば、ポリカーボネートが適しています。
燃えやすい
熱に弱いアクリルは燃え広がりやすい点がデメリットです。
燃えると穴があきやすく火災に弱いです。
たわみやすい
アクリルはガラスやポリカーボネートと比較して、たわみが生じやすいです。
アクリルに十分な厚みをつけることでたわみ対策になりますが、厚みを増すためにはコストがかかります。
ポリカーボネートとアクリルの見分け方
ポリカーボネートとアクリルを見分けるなら、自然光の下で透かしてみる方法が有効です。
ポリカーボネートとアクリルはどちらも透明性が高いプラスチックのため、ひと目で見分けることが困難です。
ただしポリカーボネートは製造する際に青み剤をするため、自然光の下で見ると周辺部が青く見えます。
一方でアクリルの光線透過率はガラスを超える93%とされており、自然光の下でも透明に見えます。
自然光の下で透かしてみて周辺部が青っぽいならポリカーボネート、透明ならアクリルと見分けることが可能です。
ポリカーボネートとアクリルの用途の違い
強度の高さや難燃性、防犯性の高さといった観点からカーポートやベランダの屋根材としてはポリカーボネートが適しています。
アクリルは透明度が高いため、直射日光があたらない室内窓やパーティションなど、屋根以外の箇所で使用した方が良いでしょう。
ポリカーボネートの用途
低温~高温まで対応する熱に強い全天候型のポリカーボネートは、カーポートの屋根、外壁や住宅の屋根にも採用されます。
自己消火性を備え燃え広がりにくい点や、防弾盾にも使用される強度は、外窓の使用で防犯性能が高いでしょう。
カーポートの屋根で使用される理由は、直射日光にも対応する耐熱性の他、耐衝撃性の強さです。
強い雨風にも耐え得る強度で、強風時の突然の飛来物にもある程度は対応できます。
【ポリカーボネートの用途例】
・カーポートの屋根
・全面採光窓
・バルコニーの目隠し
・テラスの屋根
主に上記の箇所でポリカーボネートは使用されます。
アクリルの用途
一方、アクリルは室内ドアや階段の手すりなど、室内の建材に向いています。
子ども部屋の室内窓など、透明度が欲しい場所に適しています。
DIYでは扱いやすく接着剤やカッター使用にも向いているアクリルが向いているでしょう。
また店舗でのアクリル使用度は高く、特に店舗看板やディスプレイで活躍しています。
アクリルを使用するなら、直射日光があたらない室内が向いています。
【アクリルの用途例】
・階段の手すり
・室内ドア
・内窓
・パーティション、間仕切り
アクリルは極端な高温にならない室内での使用に向いています。
ポリカーボネートとアクリルの違いを理解して選ぼう
ポリカーボネートはカーポートやベランダ屋根など、日光が当たる環境での使用が向いています。
一方でアクリルは透明度が高いため、室内窓といった活用方法が向いています。
もしベランダやカーポートの屋根材にお悩みであれば、価格はアクリルと同じくらいなのに機能性にすぐれているポリカーボネートの採用を検討してみましょう。
内野 友和
この記事は私が書いています。
1979年生まれ。一級建築板金技能士。
父・内野国春の元で建築板金の修行を始め、2014年より代表となり家業を受け継ぐ。
20年以上、約5000件の現場経験で培った技術と知識で、建物の屋根・雨樋・板金・外壁工事を通じ、地域の皆様のお役に立てるように努力しております。